うらうらと晴れるべきおれたちの明日俺が目をさますとあいつがそばにいてそのことにすこしだけ安心した。俺があいつより手負いの創がひどいことにもっと安心した。少なくとも反対の状況よりはずっといい。お前のからだを循環する血の半分の半分が戦場の地面に吸われた、ぼたぼたと血をたらしつづけるお前を背負ってここまで逃げてきた。そう言うあいつこそが紙のように青白い顔をしていた。服は俺の血で黒く硬くばりばりになっている。灌木の陰に俺は寝かせられていて、頬だって髪だって泥や誰のか判らない血でまみれている。背中の土は湿ってつめたく、何だかやさしい。もう死ぬかもしれないな、と頭の隅ですこし思った。それほど意識が薄く、ふと気を抜くとどこかへいってしまいそうだ。「どっかイッちゃいそう」何が。訊かれて、魂とか、そういうモンが。と答えるとあいつがふるえた。眼をつむってもまだあいつががたがたふるえるのが分かるのでどうして、と思うと手を握られていた。俺のだってあいつのだって血をまるで濾紙みたいな地面にだいぶ吸われて、末梢になればなるほどおもたくなり指などはずいぶん冷えきっていた。そのくせ、ばっさりやられた肩の創や腹の創や腿の創やそれらは痛いというよりももうそれは、かっと燃えているように熱い、のだった。この熱さがすっかり冷めたときに死ぬのだと思うと、その激痛や疼痛でさえすこしいとしかった。瞼をやっとのことであげて同じように泥と血で汚れるあいつの顔を見ていると死にたくないなあ、と何となく思った。一日で何十人も殺しといて言い草だよなーやべーこれもし今独りだったら自己嫌悪で早く死なねーかな俺とか思ってたかもな。あいつがいてよかった。「お前がいてよかった。」口に出すと思いのほか弱々しい辞世のことばみたいになってしまい、あっそういうつもりじゃなかったのに、と思ったはしからあいつが「そんなことを言うな、」と誤解して涙ぐんだ。目尻の泥と血があたたかい涙で少し溶ける。溶かされる。関節がどうにも軋む腕をやっとで上げてあいつの目元をぬぐう。水分大事にしとけよ。俺たちは今が何時かもわからない。昼か夜かと問われれば昼なのだが、中途半端な曇天で太陽の位置もはっきりとしない。ただ何となく陽は差すし雲はちぎれるし鳥はのどかに鳴いてるし俺たち二人だけが赤い絵の具でまみれた何だかくだらない芝居みたいだった。いよいよあいつがこぼす涙がひどくなり、俺の指につたう。泣くなよ死なないから。創の熱さはいつか鎮まり冷たい指が温まってなめらかに動き、そのからだがまた血をもとめてさまようとしても、それでもうらうらと晴れるべきおれたちの明日は待っているのだ。



















'050304 - '050304 衍田トカ

これで国語の問題できそうだな。俺とお前とあいつがそれぞれ誰のことをさすか答えよ。国語の問題ってわりと悪文でつくるもんだと思います。大体書き上がるまでに何週間もかかるんですけどこれ割と一時間くらいで割といい意味で大雑把に書けました。攘夷戦争時代習作ってことで。