実は俺そんなことに本当は興味無い、興味は無いけど俺はジャンケンで負けたのでこのことを訊かなければならないんです。これは罰ゲームなんです。(しかしこんなにジャンケンが弱いなんて俺はキャプテンのくせになんて惨めなんだ。おい、お前らはそれでいいのか。一番に勝ってしまうような田島とかがキャプテン―いや、それは危ないとしても少なくともジャンケン係は田島の方がいいんではないか。運の強さもチームの強さだ。)ともかくこれは強制された罰ゲームなんです。そう自分に言い訳しながら俺は携帯を嫌々いじってアドレスを探す。発信、を選んで押した途端俺の心臓も後ろから押されたように血を吐きだす。あーーーなんかムダに緊張する。アホだ。 る・る・る・るるるるる るるるるる るるるるる るるるるる るるるるるる 何だ出ないのか出ないなら出ないでいいというか出るな、お願いだから出てくれるな、あっモモカンバイト中なんじゃねーの?そうそう絶対そうだ。「昨日何回かかけてみたけどモモカンバイト中でさーつながらなかった。俺らのためにバイトしてんのに邪魔とかできないだろ」これでいこうこれで。わざわざ気まずくなることない。あいつらが何かぶうぶう言うようでも何とか説き伏せる。これでいいじゃないか。俺別にモモカンに彼氏いるかなんてどうでもいいし。何であいつらそんなこと知りたがるんだ。 「ハイもしもし」 って出るのかよ!あーせっかく…せっかくごまかそうとしたのに…あーあ。 「…花井くんなんで黙ってんの」 あっいけね当たり前だけどバレてんだった。どうしよ。 「なに、ちょっと、キモチワルイんだけど。何か言いなよ」 キモチワルイって!あーなんかちょっと傷ついた。もう無理。俺には無理です。後日田島とかに訊かせよう。それもマズイかな。 「…………」 つー つー つー つー つー つー つー つー つー つー つー って俺は電話を切ってしまった。あっちょっと俺やばいんじゃないか。ふつうこういうことってしたら駄目だろ。気心の知れた友達ならともかくこんな無言電話かけて勝手に切るなんて目上に失礼っていうかそれ以前にモモカンだぞ。ふつうにまずいだろ。どうしよう。やばいかもしれない。ケツバットされる。 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ うっわ今死ぬかと思った。バイブか。あーやばいモモカンからのリダイヤルだやべー点滅してる点滅してるだけで怒ってるっぽい。どうしよう。どうしようっていうか素直に謝るしかないだろ。あー声とかふるえたらどうしよう怖い。モモカンまじ怖い。 もしもし。 「電話かけた?」 かけました。すいません無言で切っちゃって。 「何?何かあったの?」 何でもありません。ほんとすいません。 「いやいいんだけどどうしたの花井くん」 カントクって今つきあってる人とかいるんスか。 「え?」 ……。 「……」 すいません。何でもありません。失礼しました。ほんとごめんなさい。もうしません。金輪際こんな罰ゲームにしたがったりとかしません。いい大人を高校男子ごときがからかうような真似してすみません。許してください。やらされたんです。俺は生け贄、スケープゴートなんです。ってこれはほとんど口に出して言ってないけど。 「花井くん」 ははははハイ。 「セカチューみた?」 …観ましたけど。 「高校生だからって純愛ってわけじゃないよね。私なんかこう、健康だしさー。」 あの、カントクすみませんでした。 「え?」 お忙しいところ。失礼しました! って俺はこれで二度目、切った。強制終了、そういう感じだった。モモカンまじ怖い。とりあえずあいつらには「高校んときにつきあってた奴のことまだ引きずってるらしい」って言おう。そうしよう。もう寝よう。 つー つー つー つー つー つー つー つー つー つー つー 寝られない。 '051204 - '060411 衍田トカ |