予告なく女性に関する不快な表現が扱われる可能性がありますのでご注意ください。 |
目の前に杉村がいて俺のことを熱い目で見ている。 俺は女の子が大好きです。小学校のときももちろんそうだったのですが、中学に入ってからは第二次性徴の力を借りて箍がはずれたように片っ端から食いました。クラスであらかた可愛い女の子をやり終わると違うクラスや先輩、後輩にももちろん食指は広がるばかりでした。俺のスコアは学年、いや学校でぶっちぎりでした。女の子というよりもはやセックスが好きで好きであの頃の俺はどうかしていいました。教室とか廊下とか校庭とか、俺は外ばかりでやってホテルや自分の部屋にはほとんど女の子を連れて行きませんでした。今思いだしても臥位でやったセックスは不自然なほど数が無いのでした。立ってやるセックスは俺なりの省エネでありエコの精神でした。 杉村が教室の窓際の席に座る俺に近づいて、何かささやく。 実に俺は女の子たちのことをぺらっぺらのエロ本の上でM字開脚をしているグラビアアイドル以上には考えていなかったのでした。自慰が終わると虚脱してそれまで食い入るように見つめていたエロ本から眼を逸らしながらゴミ箱へ放り込むのと同じやり方でそう、二度と同じエロ本を開かないように同じ女の子とは絶対に寝ませんでした。セックスがよくてももう一度やりたいとは思わなかったし、よくなくてももう一度やりなおしたいとは思いませんでした。俺の女の子の中での評判は俺に近いところからどんどん悪くなりクラスの女子などからは忌み嫌われるところまで行きました。それでもバスケでスリーポイントを決めたりするとその日の放課後には後輩の女の子から(ときには手作りのクッキーや弁当を携えながら)「思い出をつくりたい」などと迫られるので悪い気はしませんでした。俺の周りは七原をはじめ割とモテる奴でもみんな童貞だったので、俺はいつも優越感にひたっていられました。でもそれよりも俺を動かしていたのはセックスの最中の刹那感、だったような気がしました。だから結局、誰でもよかったのかもしれません。 「お前は何か忘れていることがあるんじゃないか」 クラスのやりたい女子リストの中で一人だけどうしてもやれなかった女子がいました。それは千草貴子でした。俺はその子に彼氏がいてもその子の彼氏が俺の友達でも構わず手をだしていましたが、千草貴子は本人に隙が無かったし、何よりあの杉村弘樹と恋人、かどうかは分からないけれど幼なじみで、懇意にしているようすだったのが、一番の理由でした。杉村弘樹はストイックな外見そのままに、恐らく千草とは何もなくて、恋人でも何でもないだろうと分かってはいましたが、それがむしろ理由だったのだ、と思います。つまり千草に手を出さなかったのはその恋人でもなんでもない杉村弘樹が理由なのです。恐らく杉村弘樹は俺の噂を聞き及んでいたとは思いますが、俺が千草に近づくために杉村に近づいても嫌な顔一つしませんでした。良い顔もしなかったかわりに。 杉村が俺の腕をぐっと握ってそのまま長身の身体を使って席についたままの俺を窓ガラスへ押しつける。脊椎に窓の桟が当たって少し痛んだ。杉村の掌は広く大きくて普通に背もある男の俺でも腕を掴まれると何だか女になった気がして目眩をおぼえた。違う。そうじゃない。後頭にふれる窓ガラスがひやりとする。俺はなるべく杉村を見ないように、考えないように、杉村以外の全ての感覚へ全神経を集中させたが、それは無理だった。違うんです。誤解するな。いや、誤解じゃない。俺は杉村にどうやって近づこうか考えているうちに千草なんか別にやれなくてもいいから杉村となんとかやりた……違う!俺はホモじゃない、と考えているうちに聡い杉村は何故かそのことに気づいてしまったようだった。杉村の眼は俺に露骨に彼の性欲の存在を示唆していた。こんなエロい顔を杉村がするんだ、と思ったとたん俺はひどく興奮して涙ぐんだ。そのまま杉村の顔を見上げるとその杉村の性欲の濃度はいっそう増したように見えた。そうだよ。 「叔父さんは俺のことをそういう眼で見てはいなかったけどガキの俺は確実に叔父さんに執着するあまりに叔父さんをそういう対象として見ていたしだからこそ叔父さんがずっと今も俺の前にいれば俺と叔父さんは関係を持っていた、絶対」 そんなことはどうでもいいという顔で杉村はお前の叔父さんって誰だ、と訊いた。それは俺の叔父さんの名前を訊いているのでも経歴を訊いているのでもなく、お前の叔父なんか俺には関係ないということを言っているのだった。俺は杉村が叔父さんを知らないこと、まして杉村が叔父さんではないことなんか分かりきっていた筈なのにそれを訊いてかなしくなって、興奮ででた涙がかなしみの涙でひとすじ推し流れた。俺の身体はまるで地面と水平方向に重力が存在するかのようにぴったりと窓際へついた。放課後で、グランドでは運動部の連中が部活動中なのだ。教室は傾きかけたばかりの西日がさし始める。杉村の近づいてくる目が怖くて俺はのけぞってにぶくガラスでごつんと頭をうつ。 「杉村は男とすんのってどういうときだと思う」 俺は明らかに俺が女の子にしていたようなことを杉村にしてほしい。やりすてられてもいいから杉村の気を今惹いていたい。こんなの非常事態だ。叔父さんたすけて。 '051118 - '051204 衍田トカ セックスが好きで好きであの頃の俺はどうかしていいました。←このへんとか、自分が何考えて書いていたのか思いだせない。 |