11月19日の供養






信史の隣にいる背の高い奴が俺のことをじっと見ていて、俺が鼻でふんと笑うと、何かを考えるように目を隣へうつした、かと思うと突然信史の耳朶をゆるく引っぱった。信史が大げさに頭ごと引っぱられてやって、うわお前何だよいきなり、と笑いながらそいつの首の後ろに手をまわして頬に口接けようと唇をとがらせる。おいおいおい、場所とか弁えような若者たちよ、と思ってるあいだにも、奴が俺の甥の耳のピアスをさわりながら、その身長差を埋めようとすこし顔を落とす。信史の力が抜けて手に持ってた花束が地面に落ち、その手がそのまますがるように奴の背中を肩甲をたどる。かつて俺がつけてたそのピアスから指の感触が伝わってくるようで全身がむず痒くなって、また目の前で彼らが本気で舌入れ始めたので流石に憤死しそうになった。もう死んでるけど。地面へ落ちている菊の花束を見ていると置いてきたものへの未練がつのる。信史お前のことだ。お前がピアスを捨てないことを悲しんでるのは、何もその男だけじゃない。お前の遠慮深いクラスメイトはお前が自分のことを死んだ叔父の代わりにしているとずっと思い込んでやまないのだ。だから鎖を解こうといつもお前の耳朶をさわるだろう、だのに不器用すぎて、彼はそれをはずせない。お前もそれを取る気がないのなら、幸か不幸か、俺はずっとここにいるしかない。寂れた共同墓地には、もう最近はお前とクラスメイトしか来ない。俺が身体を離した男子中学生たちを見ると、甥は立っていられないようすでしゃがみこんで泣き出した。そうやって治りかけた瘡蓋を剥がすようなことを幾度もやって、お前達はいつまでも膿んでしまっている。どうしようもないという風にクラスメイトも花束を拾って、俺の骨のかけらも埋まっていない嘘っぱちの墓前に供え、そして手も合わせてから死んでいる俺に目配せをした、ような気がした。お前たちはどうしようもないよ。





'041211 日記にて初出 衍田トカ

バトルロワイアルの杉村×三村+(叔父×三村)でした